近年、『睡眠』についての話題が取り上げられることが多い。
精神的ストレスなどが原因で、寝ようと思っても寝付けない不眠。
また、逆にたくさん寝たのになかなか眠気が取れない、いつまでも眠いといった経験はあるだろうか?
このように現代社会では、良い睡眠がとれていない人が多い。
その睡眠のトラブルを改善するべく、今は数々の睡眠グッズが販売されているが、実際にそれを買ってみてもイマイチ改善されないこともある。
それはなぜか?
もしかしたら、それは睡眠グッズで改善しにくい体の内側の問題なのかもしれない。
では、これら睡眠に関する症状は東洋医学的に考えたらどういうことなのか?
今回は、『眠り』をテーマに睡眠に関する症状を東洋医学的に、考えていきたいと思う。
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本題の前に、少し東洋医学の基礎について簡単に触れたいと思う。
東洋医学では1つの学説として『木・火・土・金・水』すなわち『五行』という考え方を用い、その5つの要素とその関係性で宇宙や自然、生命を説明する。
その五行に対応、関係性を持っている1つの例として人体で言えば、内臓の『肝・心・脾・肺・腎』が挙げられる。
イメージするならば、ちょうど写真の五芒星の頂点に五行が関係しており、上の頂点から時計回りに順番に木(肝)→火(心)→土(脾)→金(肺)→水(腎)となっている。
そして、五行に対応した内臓もそれぞれ機能がある。
その中に『眠り』に関係してくる内臓もあるので紹介していこうと思う。
先述した五臓の内、眠りに関係する内臓は『肝』と『心』である。
はじめに『肝』と『心』の機能を説明しておこう。
東洋医学的に『肝』は『疏泄』と『蔵血』という生理機能があり、内容は以下の通りである。
『疏泄』
『蔵血』
そして機能とは別に特性というものもある。
『昇発』
・・・上へ(上昇)、外へ(発散)という気機(人体の気の流れ)の方向性を表す。
『条達』
・・・条達とは木が太陽に向かって伸びていく様子、隅々まで行きわたる事を表した言葉で、伸びやかになっている状態を表す。
である。
続いて『心』は文字通り心臓とココロをイメージして頂ければ良いが機能として以下の通りである。
『主血』(血を主(つかさど)る)
・・・血液循環の原動力
『心神』(神志を主(つかさど)る)
・・・生命活動の維持、精神活動を主宰
また、特性として
『陽気』
・・・全身を温める作用。
『統括』
・・・全身は心の主血機能と神志機能により正常に機能する。
睡眠に関係する『肝』と『心』の機能、特性がお分かり頂けたと思う。
では、この『肝』と『心』に何が起こると体に影響が出てくるのだろうか?
例えば、『肝』は機能の1つとして挙げたように感情を調節している。
そして、特に精神的ストレスに弱いという特徴がある。
なので強いストレスが加わると、気機という気の流れが失調しやすく、
これにより、怒りっぽくなったり、抑うつ感、気分が落ち込みやすいといった症状が見られるようになる。
また、気の流れが滞ることで、胸肋部痛、腹張、便秘などが起こる。
では、『心』はどのようにして体に影響をもたらすか?
これはイメージ通りで良いと思うが、血液循環の原動力である『主血』機能が失調すると、血の拍出、循環に影響が及び、血をうまく送り出すことができない。
それにより、動悸(心悸)、セイチュウ(動悸が重症化した状態)、不整脈といった症状が起こる。
また、もう1つの『心』の機能である神志は精神、意識活動を主宰するが、これが脳と密接な関わりを持っている。
脳は気や血によって滋養されることで正常な機能を保っている。
特に血による滋養が必要であるため、精神活動は主血機能がある『心』の作用に含まれるのだ。
そして、血が不足したり滋養作用が減退したりすると(血虚)、脳をうまく滋養することができずそれが不眠や健忘(もの忘れ)の症状を起こす。
『肝』や『心』は何が原因で睡眠に異常をきたすのか?
機能のところでも先述したように、『肝』と『心』は血と密接な関係がある。
もちろん『肝』と『心』に異常をきたす原因は全て血が悪いから。
とは言えず、先に紹介したように感情の調節がうまくいかなくなって起こる症状もあり、様々である。
しかし、睡眠に関しては、『肝』も『心』も悪くなる原因は血であると考えられている。
東洋医学では、必要量が不足している、また機能減退を表す時には『虚』という言葉を使う。
睡眠に関して『肝』も『心』も血が悪い=血の必要量が不足している。
ので、『血虚』という言葉で表される。
では、『肝』における血虚、『心』における血虚とはどのような症状なのか?
まず『肝血虚』を説明する前に、血虚とは具体的にどういう症状か紹介しよう。
例えば、顔の血の気が少ない人はどう見えるだろうか?
図のように、顔が青ざめているような血色が悪そうだな、というイメージを持つと思う。
血虚の症状はまさにそれで、
などがあり、血が不足していて起こりそうなイメージができるものが多い。
では、『肝血虚』になると睡眠においてどのような影響があるか?
多くは、不眠や多夢といった症状が起こる。
多夢とは、文字通りで夢をよく見ることや、悪夢をよく見ることを言う。
怖い夢でなければ良いという説もあるが、寝たら怖い夢を頻繁に見る、そのせいで日中、ぼんやりとしてしまう。といった症状は、心(心神)、簡単に言えばココロが血の必要量不足により滋養されていないために起こるものだ。
次に、『心血虚』について考える。
先述したが、『心』の機能としての神志は脳と関係があり、脳は血によって滋養され、正常な機能を保っている。
では、脳を滋養している血が不足したらどのような症状が起こるか?
いずれも頭に近い部分で起こる症状が予測されると思うが、『心血虚』の症状の1つとして『肝血虚』と同じく不眠が挙げられる。
他には、めまい、もの忘れなどの症状があるが、特に『心』に深く関わる血(心血)は、脳の機能を維持するために脳に関係するような症状が起こりやすい。
他にも、『心血虚』から発展しやすい症状として『心陰虚』という病証がある。
そもそも陰虚とは何か?
中国に関する映画やテレビなどで『陰』と『陽』という言葉を耳にしたことはないだろうか?
イメージ的に陰は日陰、陽は日向をイメージして頂ければ良いが、陰は抑制・制御する力があり、陽を抑制(冷却・安静)する働きがある。
陰とは相対的に、陽は陰の力を抑制するように温めたり、陰液(血など)を押し動かす働きがある。
その陰の作用が虚してしまうと、どうなるか?
先述したように陰とは、陽に対し、抑制(冷却・安静)する働きがある。
その働きが虚してしまう(陰液が不足する)のだから、陽に対し抑制(冷却・安静)することができなくなるということだ。
つまり、温める働きがある陽を抑えきれなくなるので、症状としては、火照りや、のぼせの症状が出てくる。
イメージとしては陰虚とは「熱」の症状が出る。と思って頂ければ良い。
さて、本題に戻り『心陰虚』が睡眠にどう影響するか説明しよう。
『心陰虚』は先述したように『心血虚』から発展しやすいため、
睡眠における影響としては、
が起こる。
そして、誰しも一度は経験したことがあると思われる「寝汗」
これも東洋医学では「盗汗」といい、『陰虚』『心陰虚』の症状に当てはまる。
寝汗とは、睡眠中に汗を多くかき、目覚めると汗がとまるものである。
東洋医学的に考えると、睡眠時は起きている時に比べて、多くの陰液が臓腑におさまり滋養をするが、陽を抑制する機能が衰えているため熱の程度が強くなる。
そのため、体内を流れる水液(津液)が気化され汗となって体外へ漏れ出る。
それが、東洋医学で考える寝汗(盗汗)である。
これまで睡眠異常に関係するものを五臓から病証にかけて紹介してきた。
睡眠にお悩みの方で紹介した中に少しでも当てはまるものがあっただろうか?
最後に睡眠改善に効果があるツボを1つ紹介しようと思う。
『失眠』という名前のツボだが、
そのツボは、足底の踵の中央部分にあるツボで不眠、むくみ、冷え改善に効果があるとされている。
鍼灸院では、不眠症や足の冷えの症状で悩む人に対してよく『失眠』にお灸を行うことが多い。
それほどよく使われるツボなのである。
また、ご家庭にお灸がなくても、踵の中央部分を中心に足を温める、またその部分を指で押すだけでも効果は得られるので睡眠にお悩みの方には是非おススメしたいツボである。
今回は、睡眠に関する症状、特に不眠症状を東洋医学的に考えてきたが、眠れないという症状の裏には、目には見えない多くの要因が関係し、その症状を引き起こしている。
西洋医学でも東洋医学でも睡眠状態を悪化させる原因の1つとして、共通してストレスが挙げられる。
現代は体のトラブルには何かと薬が用いられやすいが、東洋医学的に考えても体のトラブルが起こる原因である。
薬と同様に対処法もあるということを知るきっかけになれば、幸いである。
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