授乳は母親が出産後に一番最初に控えた、大切な仕事です。
赤ちゃんは母乳をもとに、たくさんの栄養と抗体を母親から授かります。
これは思ったよりも大変な作業で、母親の体に非常に大きい負担にもなりえます。
その大切な母乳がでなくなってしまう病気があるって、知っていましたか?
今回は、鍼灸師の立場から考える、産後に母乳が出ない時の原因。
そして、その時に使えるツボや、おすすめの漢方をご紹介します。
母乳が出なくて困っているお母さまは、参考にしてみて下さい。
目次 [非表示]
母乳がでないということは、何か母親の体に異変が起きてしまっています。
厚生労働省「平成17年度乳幼児栄養調査」によると、なんと約48%の母親が母乳が不足気味、もしくは母乳が出ない悩みを抱えています。
せっかく授かった大切な子供はやはり、自分の母乳で育てたいものですよね。
母乳がでなくなってしまう病気のことを、乳汁欠乏症(にゅうじゅうけつぼうしょう)と言います。
乳汁欠乏症は、産後3ヶ月以内に起こりやすく、多くの原因が以下のものが挙げられます。
母乳が出るメカニズムを紹介します。
母乳は脳下垂体からプロラクチンという女性ホルモンによって出ます。
プロラクチンは妊娠や出産、授乳に深く関連しているホルモンです。
このホルモンはとても大事なホルモンになるので、もう少し詳しく説明していきます。
プロラクチンというホルモンが上昇することによって、乳腺から母乳が出るシステムです。
このプロラクチンが何らかの理由でホルモンのバランスが崩れることによって、母乳がでなくなってしまうことがあります。
プロラクチンの通常平常値が以下のようになります。
出産後は20~100ng/mgまで下がっていきます。
このプロラクチンの数値が産後に下がりすぎてしますと、脳が母乳は必要ないと判断してしまい、母乳がでなくなってしまうのです。
ここまでは、西洋医学での産後に母乳が出ない理由について、説明してきました。
東洋医学では、西洋医学とはまた違った考え方をします。
これから、東洋医学での母乳の出ない理由について、考えていきたいと思います。
この病気の多くは、肝気鬱滞もしくは気血両虚によって起こります。
『婦人良方』という昔の人が書いた東洋医学の本では、「婦人の乳汁が起こらないのは、すべて気血虚弱、経絡不調による」と述べています。
母乳は、気血が化生して生成されます。
気が虚すると気を乳に化すことができないし、血が虚すると乳を生成することができなくなってしますのです。
気には気化作用というものがあります。
「気化作用」とは、例えば飲食物を摂取し、その養分が『気』に変わる過程のことを指し、汗や尿など排泄物が作られる過程も同じように気化作用と言えます。
母乳の場合も同じことです。気を母乳に変化させるのです。
そして、気と血は密接な関係性にあります。
「気は血を運び、血は気を養い、血は気の母である。」
気がなくなれば、血がなくなり、気が滞れば、血は瘀血するのです。
母乳が出ない乳汁欠乏症の患者さんに、僕たち鍼灸師がよく使うツボが三陰交というツボになります。
【三陰交】
三陰交とは、読んで字のごとく3つの陰が交わるツボ。
三つの陰とは肝経、脾経、腎経で婦人科疾患に大いに効果があるツボです。
【三陰交の特性】
三陰交は主に次の3つの疾患に対して、効果を発揮します。
婦人科病の経、帯、胎、産、と衝、任、帯脈と肝、脾、腎は密接に関係しています。
脾と胃が虚して、化源が不足、肝腎の精血が少なくなると、生成の源が不足するために胎も栄養されなくなるので、婦人疾患が生じてしまいます。
この三臓の機能失調が、影響して起こる時に使われるツボです。
【ツボの場所】
足の内くるぶしから指4本分上にいったところで、スネの骨に沿って行くと少し凹みを感じるところがあります。それが、三陰交というツボです。
三陰交というツボは母乳が出ない場合によく使うツボなのですが、次のような症状がある場合には特に効果を発揮します。
【症例ケース】
女性、30歳
母乳の分泌が2ヶ月あまり続いていしまっていて、産後、母乳が次第に減少して、息切れ、脱力感、寝汗や自汗などの症状も一緒に伴っていました。
脈も細く、弱い。
母乳は気血から化生したものであるので、気血両虚による母乳の分泌欠乏であると考えられる。
三陰交を用いた治療を2回ほど行ったのち、母乳の分泌も十分であると確認することができた。
このように三陰交のツボを刺激して気血の補充をしてあげることにより、母乳をまた生成できるようにしてあげることができます。
日本では鍼灸師が漢方を処方する事は出来ませんが、漢方の中には母乳が出ない時に使える物もあります。
【気血両虚に効く漢方】
八珍湯(はっちんとう)
この漢方は四君湯(補気)と四物湯(養血)の二つの漢方が混ざった漢方です。
気血を両方補いながら、気血の流れを促進させ、さらに脾胃を強化してくれます。
産後で疲れ切ってしまい、母乳がでなくなってしまった体を、養って補ってくれる漢方ですので、産後にオススメの漢方です。
生まれたばかりの赤ちゃんにとって欠かせない母乳。
ですが、その大事な母乳が出なくなってしまう場合があります。
そんな時はまず、生活習慣の見直しをしてみて下さい。
赤ちゃんが生まれると、普段の生活に加えて夜泣きやおむつ交換など、自分の生活リズムで過ごせなくなります。
それがストレスになり、母乳が出なくなってしまう場合も多いのです。
そんな時は自分1人で無理をせず、旦那さんなど周りの方に助けを求めて下さい。
旦那さんがお子さんを見てくれている時に、少し体を休めたり、自分のご褒美へ美容室へ行くなど、ストレスと上手く付き合っていく事が重要になります。
そして、今回ご紹介した三陰交というツボや、八珍湯(はっちんとう)という漢方薬を試してみると良いと思います。
母乳が出なくて困っているお母さま方の助けになっていれば、幸いです。
〒104-0061
東京都中央区銀座 6-13-5
銀座NHビル4階
営業時間 10:00-23:00
(最終受付 22:00)
不定休
TEL 03-6278-8862
REVIEWお客様の声
2024/12/1
2020/6/24
2018/3/23
© revision. ALL RIGHTS RESERVED