東洋医学に馴染みがないとあまり聞き慣れない言葉かもしれないが『経絡』という言葉をご存じだろうか?
経絡とは、『経脈』と『絡脈』の総称なのだがこれらを簡単に説明するなら、経脈とは身体を上下に流れる縦の線であり、絡脈は「網」という意味があり、まさにその名の通り経脈から細かく小さく網の目のように縦横に分布しているものである。
そんな経絡には『気』や『血(ケツ)』が流れており、臓腑や四肢、関節と連絡し、身体の上下、内外を通り体内の全ての機能を調節している。
また、体内の全ての機能を調節している以外にも、経絡の主たる作用は大きく分けて3つある。
①生理面においては、『気』や『血』を運行させて陰と陽などのバランスを調節する。また、暑さや寒さ、湿気など身体に影響を与えるものから身体を防御する作用がある。
②病理面においては、体内に病気を引き起こす悪いものが侵入した場合、その通り道となってしまう。
③治療面においては、針灸による刺激を伝え、臓腑のバランスを調節する。
経絡は上記のような作用を持ち、病気が起こる原因もそれを治療することも経絡を考えることで可能となる。
今回はそんな『経絡』についてご紹介させて頂こうと思う。
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最近は街中に針灸整骨院含め治療院が増えてきて、どこの場所でも針灸治療を受けることができる環境にある。
しかし、その治療院での針灸治療が、患者さんの症状を全て経絡で考え治療しているかというと、おそらく全てではない。
もちろん、経絡を考えて治療をする場合のことの方が多いとも思うが、症状などによっては経絡よりも筋肉を中心に考えて針灸治療をする場合があるからだ。
ちなみに、経絡を考えての治療であれば、鍼灸整骨院よりも専門性が高い鍼灸院の方が四診とされる問診、視診、望診、切診を用い、患者さんの抱える症状を当てはめ治療方法を決定するのでより東洋医学的な経絡を考えた治療を受けられるかもしれない。
では、鍼治療の仕組みの1つ。
経絡に基づいた治療とは具体的にどういった治療プランになるのか?
例えば、1つ例を出すと現代人が悩まれている症状として多いもので「頭痛」があると思うが
頭痛と一言で言っても、おでこの前辺りが痛い、後頭部が痛い、側頭部が痛い、頭のてっぺん辺りが痛いと人によって症状が違う。
これを経絡で考えると、頭痛がした際に頭のどのあたりに痛みが出るかによっても、どこの経脈(経)が悪いかが分かり治療するべきポイントはだいぶ絞られてくる。
冒頭で経脈とは身体を上下に流れる縦の線と述べたが、頭痛で頭のどの部分が痛いかが分かったら、次はそれに対応する経脈のどの経穴(ツボ)に対して治療するかを考えなければならない。
経脈は身体を上下に走り、長いものでは目や側頭部から足の指先まで線が繋がっているものもあるが
その長く伸びる経脈上に数多く存在するどのツボを使い、その症状の緩和を図るかが重要になる。
そう考えた時に「上病下取」という中国最古の医学書(素問)に書かれた言葉が、どのツボを使うかを決める1つの選択肢になる。
「上病下取」読んで字のごとく、上の病は下に取る。つまり、頭痛のような人の身体において上の部位で起こる症状は、足など下の部位で治療する。ということだ。
実際にこの治療法は有効で、症状に対して治療する部位は離れれば離れるほど良いとされている。
上病下取の例をもう1つ出すなら、海老反りになった人をイメージして頂きたい。もしくは平仮名の「ひ」を見て頂きたい。
「ひ」の左側(書き始め)を頭とし、右側(書き終わり)を足とする。そうすると、頭(首)と同じ位置にあるのは足首、腰、背中と同じ位置にあるのは膝下あたりになるだろうか。
このイメージがそのまま治療に使えるのだ。首の症状に対しての治療に足首のツボを使い、腰の症状に対しては特に膝裏のツボが有効だ。
経絡に基づいた治療例を1つご紹介させて頂いたが、この上病下取は1つの針灸治療のやり方である。
先ほども述べたがどの治療のやり方も、綿密な問診の元に成り立つものなので針灸治療において初めの問診がかなり重要なものと言えるだろう。
経絡に基づいた治療などはどうしても針やお灸といった道具を用いないと治療ができない。といったイメージが強いと思う。
しかし、針灸治療を受けたことがない方は、針は痛そうだしお灸は熱そうだし怖い。といったイメージをお持ちの方もいるだろう。
治療院で働いていると「鍼灸治療を受けたこともあるけどあまり効かなかったから指圧の方がやってもらった感があって良い」といった声も稀に聞くこともある。
そのような場合、針やお灸など道具を用いずに経絡を考えて、針灸治療をしようと思ったツボに指圧をすることで針灸治療と同じように効果が出せるのだろうか?
結論から述べると、針やお灸をしてあげた方がより効果的な場合もあるが、そのツボに対して指圧を行ったことが症状に対して無意味かというとそうではない。
施術するべきツボというのは、何かしらの反応を示すものである。
例えば、他のツボに比べてそのツボだけ痛みを感じやすかったり、触った感じがべこべこして凹んでいるような感覚だったり
感じ方、表現の仕方は人それぞれだが、鍼灸あん摩マッサージ師やセラピストはその異常を感知する指先の感覚を養わなければならないとされている。
経絡治療、針灸治療は問診がかなり重要とも述べたが、通常はもちろん問診で知り得た情報を元に治療方針を考えると思うが
患者さんによっては、本人にとって恥ずかしいと感じることだったり、どうしても問診で伝えられないこともある。
しかし、そのことが治療をする上で重要な情報だったりもするので、問診は軽めに行いツボの反応をメインに考えて治療方針を決める先生もおられるくらいだ。
そのように、何かしらマイナスな反応を示しているツボに対して指圧で刺激を入れるとマイナスを「補」する効果が生まれるので無意味なことではないのだ。
では、経絡に基づいた考えで指圧でも効果が出せるツボをご紹介しよう。
ツボは奇穴と呼ばれるどの経脈にも属さず単独で存在しているツボを除き、身体中に361穴ある。
ツボにはそれぞれ名前がついていて、効果もそれぞれ異なる。またツボの効果はツボ名に由来しているものもある。
今回ご紹介させて頂きたいツボのである「環跳」というツボ。
読み方は「かんちょう」と読むが、漢字を見て頂きたい。漢字に跳躍の跳=はねるという意味がある。
そのため、この「環跳」というツボは足の疾患によく効くとされているのだ。このツボの場所としても臀部の部分にあるので腰痛などにも効果があるとされている。
また、この「環跳」というツボは胆経と呼ばれる経脈(グループ)に属し、胆経の経脈はまさに目から足先にかけて伸びているので目にも効果があるし側頭部の頭痛などにも良い。
さて、肝心の「環跳」の指圧のやり方だが患者さんを横向きに寝かせ、施術者は横向きに寝た患者さんの身体に対して垂直の位置に立つ。
腸骨稜と呼ばれる骨盤の横の出っ張りと、大転子と呼ばれる太ももの骨の出っ張りを手のひらの真ん中にくるようにして
その位置から両方の親指を伸ばし空中で親指同士をくっつける。くっつけた状態から後ろ方向に半回転させて指が止まった場所がおよそ「環跳」にあたるのでその部分を指圧する。
ツボを捉え的確に力が入っていると、強く刺激を感じる部分なので押し過ぎると逆に身体にとってダメージとなる。
なので「環跳」を指圧する場合は多くて3回程度にとどめなくてはならない。
治療効果がうまく出せると、1度押しただけでも施術を行った側の目に潤いが出て側頭部痛が軽くなったという声も出るくらいである。
このように臀部のツボに対して指圧をしても、経絡の流れで目や側頭部などにも効果を出す事もできるのだ。
ここまでご紹介してきたように、経絡治療においては、首が悪くても足首を治療したり「環跳」のように臀部の施術が目や側頭部に効果をもたらしたりと
なんとなく遠隔的なイメージがあると思う。しかし、場合によっては患部に治療をすることも大いにある。
だが、経絡の流れに基づいた治療をするからこそ、マッサージのような表面上からでは治療をすることが難しい部分にさえ効果を出すことができる。
簡単な例を出すなら、口内炎やものもらいをマッサージで治そうというのはなかなか難しいように思える。
かえって悪化させそうなイメージだが、経絡の流れを考えた治療を行えば、冒頭で述べた経絡の作用にもあるように他の部位で針灸治療をすることでその治療効果が経絡を辿って口内炎やものもらいのある患部に効くのだ。
よって、経絡の考えに基づいた針灸治療には、様々な症状、疾患を治す可能性を秘めているということが言える。
今回は鍼治療の仕組みをご説明させて頂いた。
経絡とは何か?
経絡を用いた治療とはどういったものか?
という事を中心にご紹介させて頂いたが、少し経絡というもののイメージはついただろうか?
この記事をきっかけに経絡、針灸治療に興味を持つ方が増えれば幸いである。
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