梅雨に入って以来、どうも体調が優れないと感じている方はいないだろうか?
6月から7月中旬あたりにかけて梅雨の時期となるが
1年を通して梅雨の時期になると特に身体が重だるいといった症状や、季節の変わり目で体調を崩しやすい。という声をよく耳にする。
夏に近づくにつれて気温も高くなるが、雨も降るため蒸し暑く湿気が身体にまとわりつくようで不快に感じる人も少なくないだろう。
では、湿気が身体にまとわりつき身体が重く感じたり、調子を崩しやすいのは何が原因なのか?
今回はその原因を東洋医学的に考えながらご紹介していこうと思う。
目次
東洋医学では自然界の気候変化を『風・寒・暑・湿・燥・火』の6つに分けている。
これを『六気』と呼び、万物を育む働きがあるため、人体にとって必要不可欠なものである。
字を見るとなんとなく季節のイメージができそうだが
この『六気』も勢いが過剰になったり時季に反して現れると病の元となると考えられている。
また『六気』に邪という言葉がつくと『風邪・寒邪・暑邪・湿邪・燥邪・火邪』となり、これらは『六淫』と呼ばれ人体に侵襲する存在となる。
以上のことから、梅雨の間は特に湿気が強くなるため、『湿邪』が人体に侵襲してきているということが考えられる。
では、『湿邪』が人体にどのような影響を及ぼすのか?
先に述べたように梅雨の時期に感じる身体のだるさや、体調の優れない感じというのは
『湿邪』が人体に侵襲することで起きている症状として考えることができる。
その理由は『湿邪』の特徴にある。
『湿邪』の特徴の1つとして【重濁性】があるからだ。
字面からも重々しさを感じるが、その字の通り「重は重い、重く付着する」という意味があり
人体に影響を及ぼすと頭や身体が重い、手足がだるいといった症状が起こる。
濁はそのまま「濁る」という意味なので分泌物や排泄物が濁った状態になる。
例えば、目やにが多かったり、小便の色が混濁していたりといった症状が起こる。
なのでこの梅雨の時期、特に頭や身体、手足のだるさを感じていたり目やにが多く出るなどの症状を感じていれば
東洋医学的な観点から『湿邪』の影響を受けていると考えた方が良いだろう。
雨が降ったりした時に、関節部分が痛くなるといった経験はないだろうか?
整骨院などで勤めていると、ご高齢で膝など関節部分を痛めている患者様からよく耳にするフレーズだが
この梅雨の時期のように雨が降るとどうして関節部分に痛みが出やすくなるのか?
実はこの症状も『湿邪』と関係しているのである。
これは『湿邪』の特徴の1つである【粘滞性】が関係していると考えられる。
【粘滞性】とは字の通り、ねっとり粘りがあるイメージで人体の『気』の流れを滞らせるというもので
『湿邪』が関節部分で滞ると【粘滞性】により、関節部分の『気』や『血』の流れが悪くなるため
それにより感覚の異常であったり、関節の痛みなどの症状が起こるのだ。
このように、1年を通して特に雨が多く湿気が強い梅雨の時期によく見られる症状の背景には『湿邪』の影響が考えられるのである。
そして、人体にはそんな『湿邪』と密接に関係する臓がある。
それが『脾』という臓で、西洋医学で考えても脾臓は肝臓や腎臓などと違いあまり聞きなれない臓器でもあるが
東洋医学で『脾』は身体の中の水をさばく場所でもあるため、湿気や水分と関係する『湿邪』と密接な関わりがあるとされている。
身体の中の水をさばく『脾』は具体的にどのような臓で、どういった特徴があるのかご紹介しよう。
では、『脾』という臓にはどのような役割があるのか?
先に述べたように水をさばくという役割もあるが
一番大きな役割としては『脾』には摂取した飲食物を消化吸収し『気』の元となるものを作るということが挙げられる。
食べ物の消化や吸収に関しては胃や小腸が関係しているのでは?と思われる方もいると思うが
その通りで消化や吸収は胃や小腸が行うが、その後、『気』や『血(ケツ)』に変化させるのは『脾』の「運化」という機能なのである。
この「運化」という機能はとても大事な役割で
「運化」の機能が失調することで身体に様々な影響を及ぼすのだ。
その理由と、どのような影響があるのかご紹介しよう。
「運化」の機能の調子が悪くなると、まず消化や吸収がうまくできなくなる。
そのため【食欲不振】といった症状が起こったり
消化吸収がうまくできないことで『気』の元や『血(ケツ)』などを作る事ができずにそれらが身体の中で不足したり
飲食物を摂取しても速やかに消化吸収ができないため、【食後にお腹が張る】ような感覚が起こることがある。
そして、消化吸収ができないということは、摂取した飲食物の水液もうまく吸収できなくなるということなので
結果、身体の中の水をうまく捌けなくなる。
それにより吸収できなかった水液が小腸や大腸の方に流れる事で軟便や【下痢】といった症状が起こることもある。
他にも、誰もが一度は経験したことがあると思うが
【食後すぐに眠くなってしまう】という症状も「運化」機能が落ちる事で見られる症状の1つで
「運化」機能が落ち、消化吸収に通常以上の『気』を使うことで、他の部位に『気』が行き渡らなくなるために
【食後の眠気】といった症状として現れる。
これらが『脾』を悪くし「運化」機能の調子が悪くなることで起こる症状である。
では、上記で挙げた症状に当てはまる人はどのようにして『脾』の調子を取り戻し再び「運化」機能をアップさせれば良いのだろうか?
そこで『脾』の調子を整える、機能向上に効く具体的なツボなどは少し後に後述するが
その前に、ココの調子が悪いともしかしたら『脾』の調子が悪いかも?と考えられる部分をご紹介しよう。
身体の中で『脾』と関係している部分というのはいくつかある。
そのため、『脾』の調子が悪くなるとその『脾』に関係があるとされる部分の色が悪くなったり何か異常が見られるようになる。
では、『脾』と関係している部分というのはどのようなところなのか列挙してみよう。
お気づきの方もいるかもしれないが、『脾』と関係しているのは身体の部分だけでなく味覚も『脾』と関係しているものがあるのだ。
では、簡単に説明していくと
①口、涎(セン=よだれの意)について
口は『脾』『胃』と連なっていて、涎と共に飲食物の消化・吸収の一端を担っている。
そのため『脾』『胃』の機能が悪くなると口や涎に影響を及ぼすことが多くなる。
具体的には、『脾』の機能が落ちることで口腔内を十分に潤すことができないと味覚が鈍ったり口が乾くという症状が起こる。
また、『胃』で起きた熱の影響を受けると、口内炎や歯肉炎、口が渇くといった症状が起こる。
次に、②肌肉(お肌や筋肉)と③唇について
唇の状態は『脾』の状態を判断するにわかりやすい部分だ。
唇の光沢や色彩は『脾』の状態を反映する。
唇が乾燥しやすくて常にリップクリームなどが手放せないという方は『脾』の機能が不調で唇を十分に滋養することができていないのでは?と考える。
肌肉に関しては、『脾』の不調で手足の無力感を感じることが多い。
③意 ④思については
文字からイメージできるように意識や精神面といった部分が関与する。
そのため、ここで『脾』の機能が不調となると、考え込んで思考がまとまらないといった症状や意欲の低下、思い悩みやすくなったりする。
⑤甘について
甘味には、補う、調和する、ゆるめるといった作用があり、甘味の適度な摂取により『脾』や『胃』を調節できるのだが
例えば甘い物が好きな人で甘い物ばかり食べていると過度な摂取により『脾』の機能に負担がかかり
先に述べた肌肉などに影響を与え、お肌や筋肉の適度な緊張が維持できなくなったりする。
上記は『脾』と関係しているものの中でも特に有名なものであり、『脾』の調子が悪いとこのような形で身体に影響を与える。
もし、当てはまるものがあれば『脾』の調子が少し悪くなっている可能性がある。
そしてこれからその『脾』の機能の調子を上げていくツボをいくつかご紹介しよう。
『脾』の調子が悪くなる事で、身体に様々な影響が出てくることはお分かり頂けたと思うが
この『脾』の調子を落としやすいこの時期、それをカバーする効果のあるツボをいくつかご紹介させて頂こうと思う。
まず、経絡の流れで考え、『脾』の調子を良くしたいので『脾』のライン上にあるツボで身体の中の湿気を取り去る効果のある「陰陵泉」というツボがある。
「陰陵泉」のツボの場所は、膝のお皿から内側に向かって指でなぞっていき、すぐ下にあるすねの骨の内側部分と交わった部分にある。
この部分は皮膚の上から触るとまさにツボのように少し凹んだ感覚がするはずだ。
そして、脾と共に消化吸収に関与する『胃』の調子を整えるために「足三里」というツボを用いる。
「足三里」というツボは、膝のお皿の真下を触ると靭帯に触れるがその外側にあるくぼみから下に向かって指を4本分重ねた部分にある。
そして、これらのツボに対するアプローチの仕方はいくつかある。
指の指圧で痛気持ち良い程度に指圧をし刺激をするでも良いし
せんねん灸などの家庭用のお灸で温めてあげても良い。
治療院などで見かけたことがある方もいるかもしれないがパイオネックス、円皮鍼といった家庭用のシール針などで刺激をするとより効果的である。
真夏も近づき、梅雨明けとなるが、梅雨の時期を通して身体の不調を感じた方は
東洋医学で考えると、『脾』がダメージを受け、機能が落ちていたためにその不調が身体に現れたことも考えられるので
上記のツボを参考に『脾』の調子を取り戻し気持ちよく夏を過ごせるきっかけになれば幸いである。
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