私達が首を動かそうと思った際には、空を見上げるように上を向いたり、逆に地面を見るように下を向いたり、首をかしげるように横に傾けたり、左右を向いたり様々な方向へ首を動かす事ができる。
実際にそれらの動きを可能としているのは筋肉であり、筋肉が伸び縮みすることでそれらの動きを可能としている。
では、その筋肉のさらに奥にある首の骨は、首を動かした際にはどのような動きをしているのだろうか?
それを知ることで、首を動かしていてこっちの方向に行きづらいな…と感じている方は首の骨のどこの動きが悪いのかがお分かり頂けると思う。
今回は首の骨の動きに注目し、外からではわからない骨の細かな動きについてご紹介させて頂こうと思う。
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首をかしげるといったように、首を横に倒す、また傾ける動きのことを運動学的に【側屈】と称される。
首の側屈において、正常な動きの範囲は片側で約35°
その動きを可能としている筋肉は斜角筋や胸鎖乳突筋である。胸鎖乳突筋などは女性モデルさんが角度によってよく浮き上がって見えたりするので一度は目にしたことがあるかもしれにないが
どちらも首の横あたりに付着している筋肉で首こりの原因となったり、呼吸の補助の役割もある斜角筋は、慢性的に斜角筋が収縮している(こっている)人の場合、呼吸が浅くなりやすいといった傾向もある。
さて、そんな首の側屈の動きは、首の骨である頚椎の動きとしてはどのように動いているのだろうか?
頚椎が側屈する際には、側屈の動きと共に回旋(位置は変わらずにその場で回転する)の動きが組み合わさって行われる。このことをカップリングと呼ぶ。
この動きは背骨にあたる胸椎でも行われていて、胸椎を回旋させる動きと共に側屈の動きがカップリングされる。ちなみに、腰の骨である腰椎や腰椎の少し上にあたる下部胸椎に関しては回旋する方向が逆になる。
実際に首の動きをシミュレーションしてみよう。例えば、左側屈をした際には上記に述べたカップリングにより左側屈に左回旋が加わる。
左回旋が加わるため、棘突起と呼ばれる背骨を触った時に触れられる部分は右方向へ向く。また、側屈に伴う回旋の動きは頭に近い骨(上部頚椎)ほど大きくなる。
私達は日常的に首を左へ右へと動かす機会は多い。信号を渡る際の確認や左右に首を回して生活している。
頚部回旋の正常な可動域は片側約45°~50°であるが、その際、首の骨である頚椎ではどのような動きがされているのだろうか?
回旋の動きは主に頚椎の1番目(環椎)と2番目(軸椎)で構成される環軸関節と呼ばれる部分で行われ、頚椎の2番目(軸椎)の歯突起と呼ばれる部分を
頚椎1番目(環椎)の歯突起窩(歯突起を受け入れるくぼみ)を転がって回旋の動きを可能としている。
また、前章で紹介した側屈と同様に、頚椎回旋にも側屈のカップリングがされる。
カップリングがどのようにされるかというと、右を向く動作(右回旋)をした際、右回旋の動きと共にここでも胸椎の側屈の動きのように
右とは逆側である左側の頚椎と頚椎の間の関節面(椎間関節面)では頭腹側(簡単に言えば頭がある方向、つまり↑の方向)へ動き
右側の椎間関節面では背尾側(お尻がある方向、つまり↓の方向)へ動く。
椎間関節の動きをもう少し深く見てみよう。左右の椎間関節の動きを見てみると回旋は非対称的に動き、屈曲や伸展は骨が綺麗に積み重なるように対称的に動く。
つまり、関節の面移動に注目して考えると、骨が綺麗に積み重なる屈曲伸展よりも回旋の方が面での移動が大きいということである。
また、傾斜で見ると頚椎2番と3番の間は、その下の頚椎4番や5番などに比べて傾斜が急になっている。
頚椎2番、3番の傾斜は約45°だが、頚椎4番や5番、さらにその下7番にかけて頚椎の椎体や棘突起自体が大きくなるため傾斜も緩やかになりだんだんと60°に近づいていく。
では、これらの傾斜は、実際に頚部の回旋をした際にどう関係してくるのか?
回旋は基本的に水平面上での動きのため、傾斜が緩やかな下部頚椎に対して傾斜が急な頚椎2番、3番間は回旋の動きが少なくなるということがわかる。
ここで上記のことを少しまとめると、例えば患者の頚椎を触診した際、頚椎2番を触って棘突起が右側寄りに感じた場合
その患者の触診した頚椎は胸鎖乳突筋や斜角筋の短縮など筋肉の影響を受けて常時、左側屈位(+左回旋位)にあるのかもしれないし
頚椎右回旋をする際には棘突起は左を向くので、頚部が正面を向いている中間位の状態で棘突起が右側寄りに感じるということは頚部の右回旋制限がかかっているのかもしれないということが考えられる。
左右を向くように首を回した際に起こる頚椎の微細な動きはイメージがついただろうか?
空を見上げる動作や、うなずいた時のように首を前や後ろに倒す動き
運動学的には、首を前に倒す動きを【屈曲】首を後ろに倒す動きを【伸展】と称される。そして、その運動範囲は約100°~110°
頚椎1番目(環椎)と後頭骨(後頭骨顆)で構成される環椎後頭関節と、回旋の際に述べた環軸関節が特に頚部の伸展時に特徴的な動きをする。
では、首を後ろに倒すような伸展運動時に、環椎後頭関節、環軸関節、頚椎ではどのような微細な動きがされているのか?
頚部を伸展しようとした際、後頭骨顆は頚椎1番目(環椎)に対して背側へ転がると同時に腹側へ滑る動きをする。
突然、転がる、滑るという単語が出てきたがこれはどういうことか?
転がるというのは、イメージするならでんぐり返しが良い例だが転がった際に背中と地面の位置は互いに変わりながら回転していくといったイメージで
滑るというのは、イメージするならスケートのように氷の上に足を着けて滑るようなもので氷の上に着けている足の位置は変わらないが滑っている氷はどんどん位置が変わっていくのでこのことを滑るという。
そして、背側へ転がるというのは、時計でいう12時から3時の方向に向かって上記で述べたように転がる運動のことをいい
腹側へ滑るというのは、時計でいう6時から7時、8時の方向へ上記に述べたように滑る運動のことをいう。
これは環軸関節でも起こる動きで、外側環軸関節において下関節面は首を後ろに倒す動きをした際に、先程と同様に背側へ転がるのと同時に腹側へ滑る。
その他、頚椎と頚椎の間(椎間関節)では、伸展の際に背側(下方)には滑るが、腹側には滑らない。
また、頚椎全体の動きを見ると、首を前に倒す頚椎の屈曲時は頚椎は直線的に並ぶだけだが、首を後ろに倒す頚椎の伸展は頚椎の中央部分である頚椎3、4番間もしくは頚椎4、5番間からスタートする。
首を前や後ろに倒す動きを細かく見ていくと、これだけ骨は細かな動きをしていることがわかる。
首の動きを知った後は、首の歪みを治してみましょう!
今回はよく見る歪みの1つ、頭が前に出た頭部前方位を治す矯正体操のやり方をご紹介いたします。
是非、お試しください。
日常的に自然と動かしている首の動きを骨レベルで見ていくと、先述してきたように骨は微細な動きをしている。
そして、首が〇〇の方向に対して動きにくい、首が前に出ているなどの状態は首を動かした際の骨の微細な動きを知っていると
〇〇の方向への動きが出ていないということは頚椎の何番目の動きが出ていないのが原因でそのような状態になっているのか、など原因が考えられるようになってくるのだ。
そして実際に施術をする際には、本当に頚椎何番目の動きが悪くて首の動きが出ていないのかをテストする。
テストをするのは首に出ている状態の原因が本当に首にあるのかどうかを確かめるためである。
首以外の体の他の部分に原因があって、首に症状がでていることも考えられるのでテストはかなり重要である。
また首の歪みを治すにも、これまで述べてきた首を動かした際の微細な動きを知っていないと、患者の首をどのように動かしていき歪みを治していくかのイメージがしにくい為
首の筋肉、また微細な骨運動まで知っていないと首の歪みを治すのは非常に難しいように思える。
今回は外側からではわからない首を動かした時の微細な動きについてご紹介したが、首を横に傾けたり、左右を見るように首を回したりした際に
実際に首の骨はこのように動いている。というのを知るだけで首の歪みの原因に予測がついたりするので施術者に限らず患者側にとっても重要な知識である。
首の動きの仕組みを知ることで、自分の首の歪みについて知るきっかけになれれば幸いである。
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