肩を挙げると痛みがある方。
なぜ痛みがあるのでしょうか?
痛みがあるという事は、なにかしらの炎症が出ている可能性が高いです。
その炎症部分をこすりつけるように肩をあげると、痛みを感じます。
しかし、肩を横に挙げると痛みが出るわりに、前に挙げても痛みが出ないなんて場合もある。
知識がない方がやたらめったら肩をマッサージをして、スジを傷つけ痛みが増してしまうなんて話も聞く。
そんな事にならないように、なぜ肩を横に挙げたら痛いのに、前に挙げると痛くないのかという原因を知っておく事も良い方法の1つだと思います。
今回は専門的な話になります。
ですが、出来るだけ分かりやすく肩の構造や、痛みの原因について、お伝えしていきたいと思います。
肩を挙げると痛みがでる方は、頑張って読み進めてみて下さい。
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肩は挙げ方によって、関節の動きや使う筋肉が異なってきます。
なので、あげる角度によって痛み方が変わる場合は、痛めた筋肉や肩周りの組織が違うのです。
では、肩の構造と、動き方について学んでみましょう。
まず、どんな関節にも基本となる角度がある。
肩の場合は、肩甲骨上45°位で、内外旋中間位を基準となります。
この角度が肩にかかる負担が一番少ないポジションなので、僕らのようなセラピストは、この角度から肩がどのように動いていくのかを判断していきます。
まず、肩関節には関節包といった、関節に包み紙のような組織があります。
この関節包は、筋肉と一緒に働いて肩を動かす時に、変な動きをしないように関節に適切な圧を加えている部分になる。
そして、関節包の特徴としては肩甲骨上20~30°(体表で45°くらい)、内・外旋中間位の肢位が、最も張力の釣り合う肢位(関節包の緊張による影響が最も少ない肢位)となる。
この肢位から腕を内側へ動かす内転という動きでは、上方の関節包が緊張し、逆に挙上位では関節包の下側の緊張が増す。
なぜこのような話が必要になるかというと、肩の痛みの1つに挟みこみ(インピンジメント)という症状に関係してくるからです。
インピンジメントとは、関節の間で関節包やスジなどを挟み込むために痛みが生じる症状の事をいいます。
例えば、腕を下に下げた状態(下垂位)で腕を挙げる(挙上)方向への抵抗をかけた場合。
上部の関節包が緊張しているため、肩峰下で挟み込み(インピンジメント)は起こらないと考えられます。
しかし、肩を動かす筋肉に問題(腱板機能障害)があると、挙上抵抗運動の際に、関節窩に対し骨頭の方が上位にくる。
すると関節内で挟み込みを起こしてしまい、インピンジメントを起こしてしまいます。
このテストは、腱板機能障害によるインピンジメント(挟みこみ)を誘発できるテストの1つとなります。
上記のようなテスト時に働く筋肉に注目してみると、腕を内側に動かす内転の動きに加え、さらに少し斜め上方向に腕を動かす水平内転という動きでは
後ろに位置する関節包はギュッと緊張をするが、反対の前側はゆるむため、肩の後ろの筋肉(棘下筋・小円筋)よりも、ゆるんでいる前側に位置する筋肉(肩甲下筋)の役割が重要となる。
そして、水平内転と逆の動き=腕を斜め後ろ方向へ動かしていく水平外転では、前の関節包が緊張し後ろがゆるむため、前に位置する筋肉よりも後ろに位置する筋肉の役割が重要となる。
では、肩をどの方向へ動かしても痛みが出る場合はどこに原因があるのだろうか?
この症状を筋肉で考えた場合、棘上筋と呼ばれる肩の後ろの筋肉が原因である可能性が高い。
棘上筋自体は肩を横に上げていく作用がメインの筋肉だが、ここの機能が失われると肩の全ての動きで痛みが現れる。
ここで、肩をどの方向に挙げたらどこの筋肉の影響で痛みが出現するのかをまとめてみよう。
肩を前に挙げていった状態から斜め後ろ方向へ向かって動かした際、この動きは先述した水平外転のような動きとなり、関節包は前側がギュッと緊張し後ろがゆるむ形となる。
この時、関節包は後ろがゆるんでいるため、筋肉としては肩の後ろの筋肉の役割が重要となる。
逆に、肩を前に挙げた時には痛みが出るが、その位置から肩を横に挙げた時の位置まで腕を動かすにつれて痛みが減ってくれば、前側に位置する筋肉(肩甲下筋)の障害が疑われる。
肩甲骨は肩をどの方向に動かしても、その肩の動きに適した動きをする骨である。
有名な肩甲骨の動きの特徴として肩甲上腕リズムというものがある。
肩甲上腕リズムとは、例えば肩を真横に挙げた際には角度としては90°挙げたことになるが
この90°の内訳は肩(肩甲上腕関節)の部分で60°、肩甲骨(肩甲胸郭関節)の動きが30°となり、2つの関節を合わせて90°つまり真横に挙げた状態となっている。
この肩の動きと肩甲骨の動きは常に2:1の関係となるのが、肩甲上腕リズムの特徴である。
しかし、先述したように正常であれば肩を前に上げた際、上がる角度に比例して肩甲骨も上方へ向かって動いてくるが、肩甲骨の機能障害があると逆に下方向へ動いてしまったりすることがある。
肩を上げる動きで痛みが出る人は、肩甲骨の機能障害がないかチェックする方法があるので、参考にして頂きたい。
チェックの方法はいたって簡単で、受け手の人は術者に腕を片方の手で持ち上げてもらい、肩を前に上げる動作をしてもらう。
そして、術者はもう片方の手で受け、手の肩甲骨の下の部分を触っていてもらう。
これで術者は受け手の肩を前に上げてみて、肩甲骨が下方向に動いてきていないかを確認するのだ。
肩甲骨の機能障害があり、肩を前に挙げた際に肩甲骨が下方向へ向かって動いている人、加えて肩を前に挙げる動作に抵抗をかけた際に痛みが出る人は、肩を挙げる際に下方向へ動いてしまう肩甲骨を押さえてあげると痛みが減ることが多い。
また、実際に上記のような肩甲骨の動きになっている場合は、肩甲骨を安定させたり肩を動かすための機能が、肩甲骨と胸郭で構成される関節(肩甲胸郭関節)に阻害されているために起こったものと考え、肩甲胸郭関節の動きを見ていかなければならない。
肩に疾患を抱えている患者さんを治療するにあたり術者は、人が肩を動かした時に骨がどのような軌道で動いているのか、ということも頭に入れておかなければならない。
そうでないと、〇〇の動きで痛い!と患者さんがおっしゃっても、肩が〇〇の動きをした時に肩関節の中のどこを動いているのかがわからないと、その痛みを軽減させるように誘導することができないからだ。
骨の動きを説明しようとすると、どうしても専門的な用語が入ってしまうが、今回は専門的な説明と、少しわかりやすく説明したものとの2つを載せようと思う。
まずは専門的な説明だが、
肩を前に挙げていく屈曲初期(0-90°)では主に軸回転によって上腕骨は移動する。
ただし、面滑りを伴っているため純粋な軸回転ではない。
屈曲90°までの軸回転は骨頭に対して()のようなイメージで面滑りを伴いながらの軸回転となる。
関節窩上を面滑りする際は横径線方向()で骨頭関節面は腹側へ移動する。
屈曲角度20-70°で肩甲骨も移動し関節窩の向きが変わり、上腕骨は矢状面上を移動できる。
屈曲中期(90-150°)では転がり+面滑りの動きとなり、骨頭の移動方向は横径線から「転がり-滑り(⇔)」の方向へと徐々に変化する。
90-150°においても肩甲骨の移動がないと成り立たず、特に120-150°にかけて関節面は弧を描いて面滑りをするため連合回旋(骨体でいう内旋方向)が加わる。
屈曲後期(150°から最大屈曲)では面滑りのみによって移動する。方向は「転がり-滑り(⇔)」の方向から「関節窩縦径線()」の方向へ変化する。後期における連合回旋が全運動で最大となる。つまりは、骨体が大きく内旋するということである。
150°以降になると関節窩上腕関節で関節窩縦径方向へ尾側滑りをする。(関節窩面が頭側を向いているため体表上は腹側へ滑る)
90°まで関節窩上腕関節では軸回転+横径線上の腹側への面滑り、肩甲帯は背側へ移動する。(肩甲骨が動くことで関節窩が向きを変え、同時に面滑りによる回転軸の変化によって上腕骨は矢状面に沿って移動できる。)
90-150°までは関節窩上腕関節では転がり+腹尾側への(関節窩横径線から「転がり-滑りの方向」へ)そのとき、肩甲帯は上方回旋をするため関節面は頭側方向を向く。
上記の説明を少し分かりやすく記すと
肩を前に挙げていった際、イメージするなら腕の骨は関節窩に対し、反時計周りに半円を描くように動いた後、最大の位置まで肩を挙げた際には時計でいう10時の方向へ向かって動く。
また、肩を挙げる角度が高くなればなるほど肩甲骨の動きが重要となる。
次に、冒頭~1章で説明したような水平内転、水平外転での動きをしたときに腕の骨はどのように微細に動いているのか説明しよう。
初めに専門的な用語を用いた説明からするが
水平内転の動きは、関節窩上腕関節のわずかな角度変化によりずいぶんと変わる。
水平内転の動きとは上肢を下垂し体側につけた状態から90°外転しそこから水平内転をするとき上腕骨は内旋位で水平内転する。屈曲位90°付近での内旋位からさらにやや内旋傾向・やや外旋傾向というわずかな違いでも肩鎖関節には大きな違いが起こる。
上腕骨小結節の位置を見ると、上腕骨外旋では頭側、内旋外旋中間位では腹側、内旋位では尾側に滑る。
では、骨の微細な動きについてだが、水平内転では上腕骨頭の動きは転がりからスタートし、肩甲骨を引き連れ肩甲骨の動きに伴って面滑りが加わり(ここで転がり+面滑りとなる)肩甲骨の動きが止まる最終部では面滑りのみの運動となる。
面滑りの方向は背外側方向となる。
その動きは骨頭上部を使っての運動となり時計でいう2時から9時の方向へ移動するような動きとなり連合回旋が発生する。
これに続く面滑りは骨体をやや外旋に向かわせる。
水平内転運動で上腕骨が少しでも内旋位にあれば関節窩上腕関節の動きは水平内転70°ほどで終わってしまう為、肩鎖関節の大きな動きを必要とする。
上腕骨頭の面滑りが少ないと、胸鎖関節や胸肋関節に影響が及んでいるということがわかる。
上記に記したものを少しわかりやすく説明すると
水平内転の動きは、肩関節の角度の影響を受けやすく一度、肩を前に90°ほど挙げた状態から腕の骨を内側に入れていく動作をするが
その地点から骨の位置がやや内側、外側にあるだけでも肩甲骨と鎖骨で作られる関節への影響は大きい。
一般的に肩を構成する肩周りの関節はいくつかあるが、肩を動かす過程で互いに協力し合いながら動いている。どこかの関節の動きが悪くなれば、近くの違う関節がその動きをカバーする。
また、水平内転をした際に上腕骨の微細な動きが出ていないと鎖骨や胸周りの関節にまで影響が及んでしまうということである。
つまり、肩を動かした際に腕の骨の微細な動き、位置によっては他の関節に大きな影響を与え歪みの元となりかねないということである。
胸周りの関節に歪みが生じれば、呼吸をした際に肋骨や胸郭がうまく動かず呼吸が浅くなったりする原因ともなりうる。
さて、今回は肩を横や前に挙げた際に生じる痛みは、何が原因で起こっているのか、また肩を動かした際の骨の微細な動きについてなど
かなり専門的な内容となったが、自分の肩を動かした際の痛みは何が原因なのか?ということの原因を探るヒントにはなっただろうか?
肩を横に挙げると痛い場合は、骨の動きに伴って、関節包や靭帯、筋肉の動きが正常ではなくなり、痛みが生じている場合が多いのです。
現代では肩こり、肩の痛みを初め肩の疾患を抱えている方がとても多いが、その肩の痛みの原因や肩の構造などについて知って頂くきっかけになれれば幸いである。
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